Home / 恋愛 / 忍びの里における婚約破棄 / 第拾話 ミドリを潰そう!

Share

第拾話 ミドリを潰そう!

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-08-31 07:29:21

 はぁ、やっぱり面倒なことになると思ったのよ、あの女。

「私のおねえちゃんを煩わせるなんて。あの女、里を追い出す前に命を頂戴すれば良かったのに」

 そうは言っても生まれたばかりの赤子から母親を奪うのは酷じゃないかと思うのよね。

「3人全員の命を頂戴するのです!」

 モミジ、物騒よ…。

 ほら、猿巳が保護されてやってきた。

「埃っぽい物置小屋に押し込められて、食事も与えられず、衛生的にも状態が悪いです」

 なるほど、オムツを交換する人間がいなかったようね。

 お尻の皮膚がもう少しで爛れ堕ちるところだわ。里で養生しなさいな。大人の事情に巻き込まれて可哀そうに。

「育児経験がある方は里にいるわよね?お任せしたいんだけど、いいかしら?」

「はい、夜泣きとか大変なんですが…。何この子、夜泣きする元気がないくらい衰弱してるんじゃないかしら?どうやったらこんなになるの?」

「どうやら、ミドリの実家では食事が与えられていなかったらしいわ」

「あんの女狐!」

 この人もモミジと同じタイプの人かしら?

「精一杯努力しますわ。そのうちもう夜泣きが里中に響き渡るくらい元気な子にします!」

「お手柔らかにね。夜泣きで里の場所が特定されるのは不本意よ」

「おねえちゃん、凄いわ!流石私のおねえちゃん!族長!って感じする‼」

「そう?普通に接してるつもりなんだけど?」

 一応、族長の元・婚約者だからかしら?

「どうにかして、あの女にも一泡吹かせたいわね」

「おねえちゃんの顔はバッチリあの女にバレてるだろうけど、私はどうかな?私があの女が狙ってる男を落としまくるっていうのは?」

「いいけど、夜会には招待状とか必要なんじゃないの?」

「そういうのの偽造に長けた人が里にいること知ってるくせに」

「モミジを危険なところに送り込みたくないのよ」

「おねえちゃん優しいー!おねえちゃん大好きー‼」

 モミジもいい加減にいい年なんだから、男性との出会いがないものかしら?今回のミドリの狙ってる男を落としまくりの中に理想の男はいるのかなぁ?いやいや、出会いというか、里の中でいいひとはいないものか、なんだか親心だわ。

 計画してからちょっとしか時間が経っていないのに、招待状が偽造された。

「この招待状があれば、今夜開かれる裕福な商家の夜会に参加できます」

 仕事が速すぎ。優秀だわ。

「さて、夜会だもの。ドレスかしら?
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 忍びの里における婚約破棄   第拾弐話 その後の里の様子

    「そういうわけで、あの家は潰されると思う」「そんな簡単にいくかしら?あの女は社会的に抹殺できたとして、その家はどうかなぁ?」 最近仕事で里を離れていた人間が号外を何枚か持ってきた。「あの女の家、潰れたぞ。庭から白骨死体が何体も出てきたんだと。この先あの土地の使い道は墓地にしかならないだろうって」 超事故物件。絶対にあの土地で暮らしたくない。「そんで、殺人と死体遺棄容疑で家の当主夫妻とミドリが逮捕ってわけだ」 そんなに死体遺棄しまくってたんだ。ミドリも猿巳が初産ってわけじゃなかったみたいだし。 亥もそんな家との取引はしないだろうなぁ。今後何も利がなさそうだし。今回手にしたのは、仲間の遺体くらいか? 猿巳も正常乳児サイズになり、里の子供達の遊び相手になっていた。「一時的に預かってるだけだからね?」 と、子供達には言い聞かせている。このままここで暮らすと勘違いされては困る。 辰巳とどうにか連絡をとり、私が猿巳を渡すという役割についた。 里の外で辰巳と面会。「もう二度と会わないでしょうね。猿巳も元気になったわよ。餞別で、子育て経験者から猿巳用に替えのオムツを数枚。と、里で育てているヤギの乳」「忍びとは関わらない生活をするつもりだ」「そう、頑張ってね」 そう言って、私は二人の前から立ち去った。辰巳が猿巳をあやすのか。ちょっと笑えるなぁ。「えー?猿巳はもういなくなっちゃったのー?」「預かってるだけだって言ったでしょ?」「むう」 頬を膨らませて抗議しているようだけど、二人はもう旅立ったからダメよ。 それに二人とも里を追放された身だもの、二度と里には戻れないのよ。 忍びとは関わらない生活かぁ、この間亥に子に喧嘩を売るものじゃないって伝えるような文を渡したから、余程愚かじゃない限り、辰巳の生活は邪魔されないだろう。「おねえちゃん、族長になる?」「そうね、そんな人生もありかなぁ。モミジが補佐をしてくれると助かるわ。それはともかく!モミジもいい年なんだから、誰かいい人いないの?」 あまり動じない人…。「あっ!招待状を偽造してくれる人は?そう簡単に動揺したりしないわよ?」 そうよ。体格はあんなにゴツイのに、偽造何て繊細な作業を難なく素早くやりこなすんだもの。動揺とは無縁よ。「あー、あいつね。あいつはダメよ。見た目に反してビビりなのよ

  • 忍びの里における婚約破棄   第拾壱話 モミジ、大活躍!

     その後も夜会という夜会であの女の狙いと思わしき男のダンスに誘われ、踊りながらあの女の醜聞を伝えた。 全く、あのくらいのことで顔色が悪くなったり、体調不良になったり弱々しすぎるわよ! あの女の本丸かな? 今日は主催者が殿下の夜会。 気合いを入れて行こー!おー! 「モミジ、大丈夫なの?」「今までの男のだらしないことこの上ない!ちょっと醜聞を聞いただけで顔色を変えて、噂の『かめれおん』ってやつ?は虫類らしいけど」 まあ、モミジの好みはドーンとしたしっかりとした男の人という事ね。チョットやそっとじゃ動揺しない人か。 「何なの?今夜も貴女がいるの?」「あら?私がどの夜会に出席しようとも自由でしょう?」 そう言って私は颯爽と会場に入った。 流石に凄いわね。アレは…しゃんでりあってやつかしら?全部がらすなのよね?掃除が大変そう。食事も美味しそうだけど、まずは様子見でいつもどおり壁の花で様子を見ましょう。 あれ?私をチラチラ見る男女が多数いるけどなんで、これでも耳もいいんです。野山で育ったし。 「今まで何回も子供を産んでるって、その度に衰弱死させているらしいわよ?」「私が聞いた話だと敵対する華族に貢がせたとか?」 何よそれー!全部あの女のことじゃない‼ウワサの出所は間違いなくあの女の実家でしょうね。何もこの夜会でひそひそ言わなくても。否定すると逆に話が長くなるし、下手すると里の話にまでなるから、放っておきましょう。 けたたましい喇叭の音と共に殿下が現れた。 はぁ、この殿下もあの女の毒牙にかかるのか…。不憫。 その時壁の花になっていた私の元に殿下がやってきて、ダンスを申し込まれた。「私には多くの噂が付きまといますが、それでも私でいいのですか?」「私は其方が良いのです。私と1曲踊ってくれませんか?」 その後、私は殿下と踊りました。「殿下にまず伝えておきます。噂は事実無根。私とは関係ありません。関係あるのはあそこにいる、商家の娘ミドリ嬢です。噂は全てミドリ嬢について言ったものです」 その後も他の夜会でも伝えたような事を殿下に伝えました。「それが事実ならばミドリ嬢の実家を調査せねばならないな」 よしっ!これでミドリは社会的に抹殺よ。「あっ、証拠が隠滅されないように、抜き打ちで調査に行くことをオススメします。それと、あの家

  • 忍びの里における婚約破棄   第拾話 ミドリを潰そう!

     はぁ、やっぱり面倒なことになると思ったのよ、あの女。「私のおねえちゃんを煩わせるなんて。あの女、里を追い出す前に命を頂戴すれば良かったのに」 そうは言っても生まれたばかりの赤子から母親を奪うのは酷じゃないかと思うのよね。「3人全員の命を頂戴するのです!」 モミジ、物騒よ…。 ほら、猿巳が保護されてやってきた。「埃っぽい物置小屋に押し込められて、食事も与えられず、衛生的にも状態が悪いです」 なるほど、オムツを交換する人間がいなかったようね。 お尻の皮膚がもう少しで爛れ堕ちるところだわ。里で養生しなさいな。大人の事情に巻き込まれて可哀そうに。「育児経験がある方は里にいるわよね?お任せしたいんだけど、いいかしら?」「はい、夜泣きとか大変なんですが…。何この子、夜泣きする元気がないくらい衰弱してるんじゃないかしら?どうやったらこんなになるの?」「どうやら、ミドリの実家では食事が与えられていなかったらしいわ」「あんの女狐!」 この人もモミジと同じタイプの人かしら?「精一杯努力しますわ。そのうちもう夜泣きが里中に響き渡るくらい元気な子にします!」「お手柔らかにね。夜泣きで里の場所が特定されるのは不本意よ」「おねえちゃん、凄いわ!流石私のおねえちゃん!族長!って感じする‼」「そう?普通に接してるつもりなんだけど?」 一応、族長の元・婚約者だからかしら?「どうにかして、あの女にも一泡吹かせたいわね」「おねえちゃんの顔はバッチリあの女にバレてるだろうけど、私はどうかな?私があの女が狙ってる男を落としまくるっていうのは?」「いいけど、夜会には招待状とか必要なんじゃないの?」「そういうのの偽造に長けた人が里にいること知ってるくせに」「モミジを危険なところに送り込みたくないのよ」「おねえちゃん優しいー!おねえちゃん大好きー‼」 モミジもいい加減にいい年なんだから、男性との出会いがないものかしら?今回のミドリの狙ってる男を落としまくりの中に理想の男はいるのかなぁ?いやいや、出会いというか、里の中でいいひとはいないものか、なんだか親心だわ。 計画してからちょっとしか時間が経っていないのに、招待状が偽造された。「この招待状があれば、今夜開かれる裕福な商家の夜会に参加できます」 仕事が速すぎ。優秀だわ。「さて、夜会だもの。ドレスかしら?

  • 忍びの里における婚約破棄   第玖話 辰巳の今後

    「流石は辰巳ですね。腐っても元・次期族長」「褒めても何も出ないぞ?ちなみに、合言葉の答えは?」「簡単ですね。『カツラ使用者』ですよ。本人の前では使えない合言葉ですよね。でも里の中で浸透しちゃってる。小さい子までわかってるんですよ」 カツラを使うという事が?族長の威厳…。「まぁ、これが用意した資料となります。旅の途中でボロボロにならないようにあえて羊皮紙を使用しました。文字はそこら辺の木の幹の上で書いたので、汚いですねぇ。机の上で机の上で書くのは変でしょう?さて、子の里に喧嘩を売ったのですから、相応の覚悟があるのでしょうね。辰巳はしばらく…そうですねあと1週間ほど野営をしてください。ユーキ…猿巳ですが、簡単に保護を致しました。亥の連中は鍛錬をしているのですか?というくらい簡単でした。貴方方二人は里を追い出されたわけですから、再び里で暮らすことはできません。今は非常時なので、ユーキあぁもう猿巳でいいですね。猿巳は里で保護している状態です。残念ながら辰巳は里に入る事はできませんが、猿巳の命は保証しましょう。ミドリの実家にいるよりもずっといい生活をしていますよ」「ミドリの実家で猿巳はどんな生活をしていたんだ?」「まず、埃っぽい物置小屋での暮らしですね。乳児にはありえません。そのままでは肺の腑が病気になることが懸念されます。食事にあたる乳ですが、辰巳には当初乳母が与えるという話だったのですか?明らかに違いますね。あの小屋で猿巳は一人っきりで生活をしていました。乳児が一人っきりです。オムツが汚れようとも、お腹が減ろうとも世話をする人間はいません。あるのは埃っぽい環境だけです」「……」 俺は絶句してしまう。ミドリの父は初孫ではないのか?「ああ、ミドリの父にとって猿巳は初孫ではないですよ?ミドリは以前にも同じようなことをしでかしまして。その時の子はもう亡くなっているのですが」 猿巳も何もなかったかのように殺してしまうつもりだったのか…。「1週間ほどたった時にミドリの実家へとその紙を持って行ってください。おそらく情報を欲しがっているのは亥の里。そこに書かれているのは、亥の里についての詳細です。構成人数、それぞれの得意技、肝心な亥の里の場所など詳細に記されています。亥の里の人間も流石に手を出してはいけない相手と認識できるでしょう。ミドリの父にそれを渡してからは貴

  • 忍びの里における婚約破棄   第捌話 辰巳の後悔

     俺は里での生活がなんて恵まれていたのかを思い知った。 一時の快楽のために全てを失ってしまった。 ユーキが人質になっている……。 また里を裏切ることになるのか。 掟を破り、外部の女を里に入れた報い。 ミドリの父は何がしたいんだ? 里の情報を得て何をしようとしている?  「辰巳、キョロキョロ周りを見ずにそのまま聞いてください。当然ながら、あなた達二人には尾行をつけて追放をしています。私はその一人です。ミドリの方についていますが、ミドリのまわりには忍びのような経験をした人がいないので、気取られることはないでしょう。ユーキ…猿巳の事ですね?その子が人質になっていると?それならば、我々としてはその子を助け出しましょう。貴方がすべきことは、偽の情報をミドリの父に与えることです。情報を欲しがっているのは恐らく‘亥の里’でしょう。では、数日後に里の付近で…」 俺はない頭で考える。 亥の里の者が情報を欲しがる?ならばミドリの付近に亥の里のやつらがいるのでは? 俺はミドリの側に近づいた。 なんか淑女のような出で立ちのミドリがそこにはいた。 俺の境遇もユーキの今の状態も何もなかったのように着飾っている。「辰巳、近づかないでよ。汚いわ。私はこれから裕福な商家の夜会に招待されているのよ。貴方には一生縁がないでしょうね」 そう嘲笑しながら彼女は去って行った。 ミドリの事はもうどうでもいい。この異質な気配…。 ミドリの側に忍びがいる。それも複数人。護衛か? ならば、子からミドリにつけていた尾行の人間は?消された? ミドリが恐ろしくなった。 俺に出来ることは子の偽情報を持ってくることのみ! おそらく、里の外で情報を書いた紙を渡してくれるのだろう。  俺はミドリの父を裏切らないように今度は亥の里の連中に尾行されているようだ。 俺が言うのもおかしな話だが、俺に「尾行されてるな~」とか思われるあたり、亥の里の人間の忍びとしての能力は子の里よりも劣っていると俺は思う。 子の里の人間には尾行されてると全く気付かなかったからな。 そういえば、ユーキのところには護衛はついていないのだろうか?亥の里の。子の人間なら勝てるとは思うが……。 ミドリはああして着飾って夜会へと行き、自分へと貢ぐ男を探すんだろうな。俺はどうしてあんなに尻の軽い女に骨抜きにされての

  • 忍びの里における婚約破棄   第漆話 ミドリの実家

     なんだかスッキリした。 目隠しをした物証さん達は帰ってもらった。 ただ、ミドリの実家の元・使用人さんはあまりにも哀れなので、この里でよければという条件でこの里が受け入れた。 もちろん受け入れたことは秘密だし、しばらくは一応の監視がついている。「この度は本当に感謝している」「本当ですよ!私のおねえちゃんがいなかったらこの里がどうなってたことやら。辰巳が族長になったら、里を出ていくって人が沢山いたんですよ!」 このモミジの発言には流石の族長も驚いていた。「次期族長という立場でありながら、外部の女性を妊娠させて里に連れてくるなど言語同断です!」「ゴホンッ。それでだなぁ、今回の動きを鑑みて次期族長にはカエデが相応しいと思うのだがどうであろう?」「私のおねえちゃんが族長ですか?完璧です☆」「そうか?カエデはどうだ?承諾してくれるか?」「ちょっと考えさせてください」「もうーっ、おねえちゃんたらその場で承諾すれば良かったのに」 頬を膨らませたモミジは可愛いが、この件はまだ引きずる気がする。「辰巳、当然里の場所はどこにあるか知ってるんでしょ?」「地図を見てもわからないけど、迷子にはならない」「そう」 二人の子供を抱えながら微笑むミドリを見て、辰巳は何かが奥歯に挟まったような違和感を覚えた。 その後二人は、ミドリの実家に身を寄せることとなった。「初めまして。辰巳と申します。この子の父親です」 「あぁそうなの?」と、ミドリの母は実に淡白だった。歓迎するでもなく、叱責するでもなく……。 ミドリの父にはこっ酷く折檻を受けた。嫁入り前の娘さんが一年近く行方不明だったんだし、この間は里の人間に目隠しで写真を撮られたのか。と甘んじて受け入れることとした。 が、ミドリへの対応は良いとして、俺とその子に対しての対応が全く異なる。どういうことだ?通常ならば『婿』として扱われるのではなかろうか?使用人への対応に似ている。 ミドリの父も俺は『旦那様』と呼ぶように言われている。子供の名前は‘ユーキ’となったと聞いたが、初めてこの家に来て以来顔を見ていない。今はどこにいるのだろう? 使用人のウワサだと、物置小屋で生活しているらしい。ミドリの父にとってだって初孫ではないのか? ユーキには専属の乳母がついていると聞いた。ミドリも一応良家のお嬢様というやつなので

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status